アルゼンチン vs USでビーフステーキ対決

幻だったアルゼンチンビーフ

このブログの初回の投稿に書いたとおり僕のBBQの原点は昔訪れた南米にあり、とりわけ肉食大国アルゼンチンには今も深い敬意と憧れを持ち続けています。

アルゼンチンは一人当たり年間60-70㎏の牛肉を消費するという国ですから、牛肉とその調理に対する拘りは半端ではありません。その特徴をいくつか挙げると、肉牛はアンガス牛が主、若い牛の肉が好まれるので出荷月齢が他の国より若い、放牧主体の「グラスフェッドビーフ」で脂肪は少なめ赤身が強い、肉は熟成しないで食す、レアよりもウエルダンに近い焼き方を好む、燃料は薪が一番、等々で肉に対する拘りと調理法にも独特なポリシーが感じられます。

もっとも最近では、かの有名な大草原パンパでも牧草に代わってトウモロコシが栽培され、穀物多給で効率重視の米国流肥育法がポピュラーになりつつあるらしく、これを嘆く話をよく聞きます。

さて、そんなアルゼンチンの牛肉ですが、実はごく最近まで日本では幻の味でした。アルゼンチン国内で口蹄疫という牛の病気の発生があることから、アルゼンチン産牛肉の日本への輸入は2018年まで禁止されていたのです。2018年以降、口蹄疫の発生がない南部のパタゴニア産に限って輸入が解禁されたのですが、まだ一般にはあまり流通していないようです。今回はアルゼンチン産牛肉専門店ドン・ロッシさんから通販でステーキ用牛肉を購入して、僕にとっても懐かしい幻の味を調理してみました。

ドン・ロッシさんから購入したステーキ用リブロース250gX2(左)。右はコストコのUSビーフ。

 

アルゼンチン vs US ビーフ対決

さて、アルゼンチン産牛肉とある意味で対極にあるのが米国産牛肉です。上述のように米国の肉牛肥育は穀物を多給し、巨大なフィードロットを持つ牧場で行われるのが一般的と言われています。僕はこうした米国の巨大肥育牧場を一度訪問したことがあります。ここの肥育舎の大きさは想像を絶するもので、我々見学者を乗せた大型バスが肥育舎に直接入り、そのまま中を通過したのには驚かされました。一方で広い肥育舎の中で大量の牛がすし詰め状態で育てられていて、極度の効率主義にちょっと複雑な心境になりました。

肉そのものを比較した場合、米国産牛肉は柔らかめで癖がないというのが一般的な評価です。これに対してアルゼンチン産牛肉は牧草主体で育てられ、赤身が多く肉が締まっており、肉本来の味が強く個性的とされています。今回は折角の機会なのでコストコからUSビーフチョイス肩ロースを買ってきて両者を食べ比べてみることにしました。

左がアルゼンチン産リブロース、右がUS産肩ロース、肉の色がかなり違っています。

僕のステーキは10秒焼いて2分休むを繰り返して焼く

僕のBBQでは塊肉を炭火で1-2時間じっくり焼くのが常なのですが、ステーキとなると焼き方をどうするか結構迷っていました。その大きな理由は世の中に実に数多くのステーキの焼き方が紹介されているためです。いったいどれが一番いいのか、素人でも簡単に美味しく焼ける方法はどれか、いろいろ試行錯誤してきました。そして、最近になって「ステーキの焼き方はこれ」と決めている方法が「10秒焼いて2分休む」という焼き方です。

アルゼンチンビーフはリブロース250gが2枚。

この方法は松浦達也さんの著書「大人の肉ドリル」で知ったので、詳しくはこの本をご覧ください。要点は肉の各面を10秒焼いては2分間休ませるを繰り返し、好みの焼き加減になるまで続けるという極めて簡単なものです。1ポンド(400g)のステーキ肉だと、大体5回程度で外がカリッと焼き目が付き、中はミディアムからミディアムレアに仕上がります。失敗することはまずないので、今はステーキ焼くときはこの方法一つでやっています。

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肉の各面を10秒ずつ焼いて2分休ませる。これを何回か繰り返す。

アルゼンチン牛肉は味の深み、US牛肉は癖のなさが特徴

「10秒焼いて2分休ませる」を5回繰り返して焼いたのが下の写真です。今回焼いたアルゼンチン牛肉はリブロースのステーキカット(250g)、US牛肉は同じくステーキカットのコストコUSビーフチョイス肩ロース(400gくらい)です。因みに今回のアルゼンチン牛肉のお値段はコストコビーフの3倍くらいで、かなり高価です。

USビーフ(左)とアルゼンチンビーフ(右)

味を比較すると、どちらも赤身主体なので比較的しっかりとした嚙み心地です。ただアルゼンチン牛肉の方がやや肉が締まった感じがします。またアルゼンチン牛肉は肉の味が強めではっきりとしているようです。ステーキなら味付けは塩コショウのみでもいいかもしれません。その方が肉の味が確かめられると思います。実際、アルゼンチンでは塩コショウのみのシンプルな味付けが好まれています。

US牛肉の方は全体的に癖がない味です。肉汁にニンニク、バター、醤油を加えて作ったグレイビーソースをかけると美味しくなりました。味の印象をビールに例えてまとめればUS牛肉はライトな「スーパードライ」、アルゼンチン牛肉はテイスティな「エビスビール」、のような感じでしょうか。

アルゼンチン牛肉の本来の魅力は「安くて美味しい」ことです。アルゼンチン流に大きな塊肉を毎週末アサード(焼き肉)で味わうために、リーズナブルな値段のアルゼンチン牛肉がたくさん流通してくれると嬉しいですね。