デントコーンから作る南米料理「チパグアス」とパンをマイ石窯で焼く

2021年正月。十勝平野から見た夕暮れの日高山脈のシルエット。

あけましておめでとうございます。

前回の投稿から時間が経ち、いつの間にか年も変わりました。今年もよろしくお願いいたします。僕の住む北海道十勝は正月過ぎても雪がないという冬が続いていましたが(気象庁の観測開始以来らしいです)、1月7日になってようやくまとまった降雪がありました。ただ今朝の気温はマイナス23℃。こう寒くなると流石にBBQや石窯は現在お休み中です。

前回の投稿では石窯の初仕事としてピザを焼きました。その後年末でバタバタするうちに寒さも本格化したので、石釜料理の再開は春を待つことにしました。今回は年末に試作してみた石窯パンと石窯を使った南米料理を紹介したいと思います。

石窯パンと石窯アヒージョはベストなマリアージュ!

石窯と言えばピザ、そして次はやはりパンとなりますよね。本とかを読んで知っていたつもりでも、実際に石窯を使ってみると様々な疑問も湧いてきます。その一つが石窯の温度。ピザは400℃以上が必要、ではパンはどうなのか。調べてみるとパンは200-250℃位の低い温度でいいんですね。その代わり焼く時間には30分から1時間位をかけています。

石窯は2時間位かけて温度を上げます。当然薪も結構使います。

石窯の場合、薪を燃やして徐々に温度を上げていくわけですが、窯の温度を450℃位まで上げるには2時間位が必要です。これは温度をあまり急激に上げるのは石によくないのが理由の一つ、また短時間で温度を上げても石に十分熱が蓄えられず、火を止めると窯の温度がすぐに下がってしまうのがもう一つの理由です。一方で薪を焚きながらだと温度は維持できても煙が多すぎて難があります。何れにしても石窯は思ったよりも薪が必要なので、一度火を起こしたら幾つかの料理を計画的かつ効率よく作るのが上手な使い方になると思います。

さて石窯初のパン作り。僕の家ではパンはカミさんの専売特許なので、石窯パンの製作も生地と調理はカミさんにお任せし、僕は主に火の番です。今回はシンプルな塩パンと五穀パンを作りました。

石窯パン第一号の塩パン。

パンは石窯内の温度を250℃くらいにして、時間は大体30分を目安に焼きました。出来上がり写真を見るとどうでしょうか。見た目は上出来と僕は思いますが、カミさんはちょっと満足がいかないようです。まあ、初回ですからこんなものでしょう。いや上出来です。プロじゃないので試行錯誤も楽しみですよね。

こちらは続けて焼いた五穀パンです。

折角なのでパンに合う石窯料理も一緒に作ろうと選んだのがエビのアヒージョです。今回はスキレットを使いましたが、スキレットやダッチオーブンのような鉄鍋は石窯ととても相性がいいと思います。またスキレットを買うなら蓋付きがお薦めです。最近はIH対応もあり、いろいろな料理に使い回せて便利です。

二層式の石窯の場合は上の層でパンを焼きながら、薪を燃やす下の層で鉄鍋の調理が同時に出来るところも便利です。調理は放っておくだけでいいというのも嬉しいポイントです。

スキレットやダッチオーブンは下の燃焼室を使うと効率よく料理が作れます。

エビのアヒージョにはエビに加えて地元産の無農薬ニンニクとこれまた地元産の十勝野マッシュルームをたっぷりと入れました。石窯+スキレットの威力は絶大で、蓋をして数分で中の材料が一気に調理されました。アヒージョはよく作りますが、これは今までにない体験です。石窯パンとアヒージョは石窯料理のベストなマリアージュ(組み合わせ)の一つのようです。

あっという間にぐつぐつと出来上がったアヒージョ。

太陽の下で出来立てのパンとアヒージョを頂きました。車の運転があったのでワインと一緒できなかったのがとても残念でした。カミさんはイマイチだと言っていたパンも最高に美味しいです。石窯万歳です。

焼き立てのパンとアヒージョ。ベストマリアージュの一つ!

トウモロコシを挽いて作る南米の伝統料理チパグアスも石窯で

このブログの初回に書きましたが、僕のBBQライフの原点は若い時代の南米体験にあります。南米のBBQは最高ですが、南米にはBBQ以外にも美味しいものやユニークな食材がたくさんあります。その中でも特に中南米全体を代表する味であり食材といえばトウモロコシだと僕は思います。

いわゆる新世界と呼ばれる中南米原産の作物はたくさんあります。その中でもジャガイモとトマトはもう中南米という範疇を大きく超えて、世界中で無くてはならない作物になっています。これに対してトウモロコシは、穀物としての作付面積は世界一なのにもかかわらず人間の食物としてはマイナーで、今も中南米のローカル色が強い存在です。

飼料用のトウモロコシの実。開花から3週間位した、まだ柔らかい時期に最も甘さが増す。

トウモロコシには用途として家畜餌用、工業用、食用、また作物的な種類ではポップコーンからスイートコーン等々多くの種類があります。ただ日本でトウモロコシと聞いて普通連想するのは甘いスイートコーンだと思います。しかし、中南米ではスイートコーンよりも日本では家畜の餌用に作られている「デントコーン」という種類に近いものの方がポピュラーで、食用にも供されています。メキシコのトルティージャに使うトウモロコシも基本的に同じ種類のものです。この種のトウモロコシはスイートコーンのような甘さはありませんがトウモロコシ本来の独特の風味が強くあります。しかし日本ではスイートコーン以外のトウモロコシを手に入れるのは難しく、結構幻の味と言えます。そのため僕は中南米料理用に毎年このデントコーンを自分で作り収穫し保存しています。今回はこの冷凍保存した生のデントコーンの実を使って南米パラグアイの伝統料理「チパグアス」を石窯で作ってみました。

チパグアズにはまだ柔らかい「デントコーン」の実を使う。

チパグアズというのは、まだ柔らかいトウモロコシの実を使い、これを砕いてタマネギとチーズやラードと一緒に混ぜたものをオーブンで焼く南米パラグアイ伝統のトウモロコシケーキです。同じような料理に「ソパパラグアージャ」というのもありますが、こちらは成熟して固くなったトウモロコシの実を粉砕して(粗挽きのコーンフラワー)使うものです。どちらも、強いトウモロコシの風味が魅力で、食べ慣れると引き込まれる料理です。中南米ではこうした生のトウモロコシの実を使った料理が各国にあるようです。

完成したチパグアス。焼き色がとてもいいです。ビールなんかにも合います。
粗く挽いたトウモロコシの粒がまた良い食感を生みます

さて、石窯で焼いたチパグアスは写真の通り表面の焦げ方と色がとてもいいです。食べてみた味もこれまで作った中では最高でした。石窯、グッドジョブです。