トウモロコシ粉で作る南米パラグアイの郷土料理「ソパパラグアージャ」

人が食べる「スイートコーン」、牛が食べる「デントコーン」

北海道をドライブしていると広いトウモロコシ畑をよく目にします。甘いスイートコーンは北海道を代表する農産物ですが、車窓から見えるトウモロコシの大半は実はスイートコーンではなく家畜の餌となる「デントコーン」と呼ばれる種類のものです。同じトウモロコシなので外見は似ており、スイートコーンだと思って畑から失敬する観光客もいると聞きます。ただデントコーンはスイートコーンと違って甘みがほとんどなく、また固くて不味いので、恐らく食べたらびっくりしたのではないかと思います。もっとも国によってはこれを焼いて「焼きトウモロコシ」にして食べるところもあるようです。確かに、よく噛んで食べると旨味がないわけではありません。今でも地方の道の駅などで見掛けることがある「モチキビ」に近い風味だと思います。

スイートコーンとは似て非なる家畜用トウモロコシ「デントコーン」

中南米料理に使うトウモロコシは「デントコーン」の仲間

前々回の石窯の記事では、このデントコーンを使って南米パラグアイの郷土料理、「チパグアス」を作りました。実は中南米料理で使うトウモロコシは、ほとんどがこのデントコーンに近い種類です。というか、世界中で作られるトウモロコシは、工業用・飼料用・食用を問わず、広義で言えばデントコーンなのです。日本ではスイートコーン以外のトウモロコシはあまり食卓に載ることはありませんが、デントコーンを使うと世界の様々なトウモロコシ料理を作ることが出来ます。チパグアスは未熟なデントコーンの実を生のまま砕いて使いましたが、今回は成熟して固くなったデントコーンの実を粉にしたものを使います。

トウモロコシ粉と小麦粉の違い

さて、トウモロコシ粉を使った料理と言えば何といってもタコスのようなメキシコ料理が最も有名です。メキシコは何といってもトウモロコシの原産地と言われる場所ですから、その食べ方にもバラエティがあり、さすがと言うか歴史を感じます。また、最近はイタリア料理のポレンタ(トウモロコシ粉で作るマッシュドポテトみたいな料理)もレストランで目にするようになってきました。トウモロコシ粉を使った料理には独特の風味があり、好みが分かれるかもしれませんが、一度この味に慣れると癖になります。

トウモロコシ粉は小麦粉と違いグルテンを含みません。このため粘りがなく、パンや麺には不向きとされています。実際トウモロコシ粉に水を加えて練ってもパサパサしてよくまとまりまりません。このためタコスに使うトルティーヤを作る場合はニシュタマリゼーションという処理が施されます。ニシュタマリゼーションとはトウモロコシの実を消石灰を加えた水で煮て一晩浸けて置くことなのですが、この結果トウモロコシ実が柔らかくなり、若干の粘りも生じます。古代メキシコ人は灰汁を用いて処理したようですが、まさに古代人の知恵だと思います。

ニシュタマリゼーションを施さないトウモロコシ粉は粘りがないのでパンのような調理よりも、ポレンタのように水を加えて練って加熱したり、パウンドケーキのように卵や油を加えてオーブンで焼く調理法が適しています。今回ご紹介する「ソパパラグアージャ」もトウモロコシ粉を使ったパウンドケーキの一種です。

南米パラグアイの伝統家庭料理「ソパパラグアージャ」

ソパパラグアージャは直訳すると「パラグアイのスープ」という意味ですが、上述のようにパウンドケーキのようなものでスープとは全く異なるものです。その謂れには諸説あるようですが、何れにしても南米パラグアイを代表する家庭料理です。前述のチパグアスはソパパラグアージャとほぼ同じ調理方法ですが、トウモロコシの生の実を使うので作る季節が限られ、また水分が高めなので日持ちはあまり良くありません。一方、ソパパラグアージャは粉があれば何時でも作れ、チパグアズよりも日持ちがします

今回使用したトウモロコシ粉は北海道内で生産加工されたものですが、コーングリッツに近い粗挽きの粉とやや細かい粉をミックスして使いました。粗挽きのほうがトウモロコシの風味が強くソパパラグアージャ用には最高でした(全粒粉だと風味が更に増します)。ただ、同様の粉は一般にはなかなか手に入りません。飼料用のデントコーンを畑から採って同様の粉を自分で作ることは可能ですが、粉にして挽くためには実が完全に登熟するまで待たなければなりません。北海道の飼料用デントコーンはほぼ全てが発酵飼料のサイレージ(サイロの中で発酵させて貯蔵する)という形で使われているので、通常は実が完全に熟する前に収穫されててしまいます。

一番確実な方法は自分で種をまいてデントコーンを育てて完熟させる事です。これだと完熟する前に収穫した生の実を使ってチパグアス、完熟させた実を挽いた粉でソパパラグアージャを作ることが出来ます。ただデントコーンの種子は一般に販売されていないのが難点です。手に入れるとしたら、知り合いの農家の方に頼むなどしなければならないでしょう。

粉を買うならイタリア産のポレンタ用トウモロコシ粉がお勧め

自分で粉を挽くのでなければ、動画でも触れたイタリア料理のポレンタ用のトウモロコシ粉が一番使えると思います。これはAmazonでも常時手に入ります。スーパーなどで見かけるコーンフラワーは細かすぎるし風味にも欠けます。ポレンタ用の粉は挽きがやや粗めで風味もあります。

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北海道では結構身近にありながら食用として料理されることは全くないデントコーン。次回はデントコーンの実を今回少し触れたニシュタマリゼーション処理して、メキシコ料理のトルティージャを伝統レシピの手法で作ってみたいと思います。