塊肉で作るBBQの魅力はスロークッキングが作る味

南米では肉と言えば塊肉

僕は生粋の道産子なのでBBQというか、焼肉の原体験はジンギスカンということになります。このジンギスカンも含め、日本で焼肉やBBQというとスライスされた肉を網や鉄板で焼くというスタイルが一般的です。もちろん、これはこれで美味しいと思います。しかし、前回記した南米式焼肉にはスライスした肉というのは基本的にありません。使うのは常に塊肉です。

道産子のソウルフード、ジンギスカン。写真はジンギスカンと相性抜群の行者ニンニクと一緒に。

 

南米では焼肉用に限らず肉は基本的に塊で売られています。日本式の焼き肉をやる時には、塊肉を苦労してわざわざ薄く切ったりしたものです。しかし、南米の牛肉は赤身で固いので薄切りで食べても実はあまり美味しくないことが僕にも段々とわかってきました。一方で、塊肉を南米式焼肉=アサードで食べると、肉質は少々固いものの噛みしめるほどに肉のうま味が感じられ、少なくともこの場合は塊肉の方が数段美味しいことが実感できました。ただ、差しの入った和牛を焼く場合は塊よりもスライスした方が美味しいように思います。

約1㎏の骨付きラム。ジンギスカンとは一味違う旨さ。間接焼き(インダイレクト)でじっくり焼く。

調理にかける時間と手間も塊肉の魅力

塊肉の魅力を一口で言えば肉のうまみが閉じ込められ、凝縮されることにあります。この時に表面はしっかりと焼き色がついた方が風味がよくなります(メイラード反応)。しかし、肉の中までに火が通り過ぎるのはよくありません。このため塊肉はスロークッキング、時間をかけてじっくりと焼かなければならないのです。上の写真は約1㎏の骨付きラム肉を焼いたものです。炭をグリルの両側に寄せた間接焼き(インダイレクト)で肉の表面温度を上げ過ぎないように仕上げていきます。仕上がりは大体2時間くらいです。少々まどろっこしく感じるかもしれませんが、こうして肉の様子を見ながら徐々に仕上げていく過程が実は最も楽しいひと時なのです。

BBQというとどうしても材料をたくさん揃え、大人数でワーッと食べるのが常ですが、来客を待ちながら一人じっくりと肉と向かい合う(少し酒でもあるとなおよい)というのもまたいいものです。そして、この時間こそが至福の時なのです。

米国流のスモーカーグリルでじっくり肉を調理する楽しみ

南米式のBBQは基本的にグリルの上で焼きますが、米国式ではスモーカーという道具を用いるのもポピュラーな方法です。これは間接焼きの一種ともいえますが、副室で炭や薪を焚いて主室の塊肉を調理します。この際に主室ではチップを燃やして燻煙も行います。米国人はこのスモークフレーバー、それもややきつめが大好きのようで、BBQレシピ本にもスモークを用いたレシピが多く登場します。南米では薪はよく使いますが、スモークチップを使った燻煙はあまりしないので大きな違いだと思います。

米国式のスモーカーグリル、Char-Broilの「オフセットスモーカー」。左の副室で炭や薪を燃やして、右の主室にある肉を間接焼きで調理する。主室では同時にチップを燃やして燻煙を行う。

このスモーカーを使った料理も時間を要します。そもそも肉は塊肉なので4-5時間くらいかかるのは当たり前で、物によっては半日くらいかけて焼き上げます。実に悠長な話です。BBQファンの方ならYouTubeの「BBQ Pit Boys」というチャンネルを御存知かもしれません。この中でもスモーカーを使ったレシピが数多く登場しています。髭面の、いかつい男たちが煙を眺め、ビールを片手に肉の仕上がりを待っている姿が何ともいい感じです。

塊肉の場合、調理そのものにも時間を要しますが、実は肉の仕込みやら何やらで、実際には前日から念入りな準備を行うことが多くなります。この全ての過程、全ての時間が塊肉を調理する魅力であり、それはどこか最近流行りのソロキャンプにも通じるものがあると思います。

スモーカーで調理した牛肩ロースの塊。表面はスモークで色が濃い。長時間調理では肉の中心に刺したワイヤレス温度センサーがとても役に立つ。