キャッサバ粉とトウモロコシ粉で作るチパは南米パラグアイの国民的おやつ
若い頃に数年間を過ごした南米パラグアイには数多くの懐かしい思い出の味があります。その中には、最初は馴染めなかったのに時間を経るうちに好きになり、最後は忘れられない味になったものもあります。そんな一つが、パラグアイの国民的おやつとも言えるチパです。キャッサバ粉で作るチパはパラグアイ以外の国にもありますが、パラグアイのものはトウモロコシ粉を加えるのが特徴とされ、特に区別する時にはチパパラグアージャ(Chipa Paraguaya)と呼んでいます。チパはキャッサバ粉とトウモロコシ粉にチーズやバター、牛乳を混ぜて練った生地を焼く無発酵パンの一種ですが、生地に加えるスパイスのアニス、そしてパラグアイ独特のローカルチーズの風味が、癖になる味わいを醸し出します。キャッサバ粉の原料のキャッサバ(現地ではマンジョーカ)は中南米原産の熱帯性植物で、食用とするのは地下のイモ(塊茎)の部分です。当時のパラグアイではこのキャッサバイモをふかしたものが主食でした。トウモロコシの方は言うまでもなく中南米を代表する食材ですが、パラグアイでも広く食され、このブログでも何回かトウモロコシの実や粉を使った南米独特の料理を紹介しています。(トウモロコシ粉で作る南米パラグアイの郷土料理「ソパパラグアージャ」)(デントコーンから作る南米料理「チパグアス」とパンをマイ石窯で焼く)
チパはいわゆる軽食ですが、家で作って食べるというよりも、通りやバスターミナル等にある売店や街行く売り子から買って食べるのが主流です。チパの専門店も数多くありました。パラグアイの地方にもチパで有名な町がいくつかありました。こうした町の国道沿いには多くの専門店舗が軒を連ね、各店専属の売り子が車で通るドライバーや観光客、長距離バスの乗客達にチパを売っていました。こうした場所では商品の回転が良く常に焼き立てが供され、一段と美味しいチパが味わえました。
懐かしの味をマイ石窯で再現してみることに
現地の味というのは単に食材を揃えただけでは再現するのが難しい場合があります。パラグアイの本格的なチパはオルノデバロ(horno de barro)と呼ばれる大型のカマドで作られており、やはりカマドがないと本格的なものは難しいように感じて、これまで長年作るのを躊躇していました。2年前に念願の石窯が手に入り、これなら本格的なチパにも挑戦できるのではないかと、今回は満を持して挑んでみました。
チパの材料
上述したように、チパパラグアージャの主な材料はキャッサバ粉とトウモロコシ粉です。キャッサバから作る粉にはキャッサバ粉とタピオカ粉がありますが、タピオカ粉の方はデンプンのみを抽出したもので、チパにはキャッサバ粉を用います(動画の字幕にはタピオカ粉とありますが、正しくはキャッサバ粉です)
因みに日本でもポピュラーになったブラジル産まれのポンデケージョ(訳すとチーズパン)もキャッサバ粉で作るのが基本です。チパの味はポンデケージョと似ていて、ポンデケージョを食べたことがある人には「ポンデケージョを少し固くしてアニスを加えた」と表現するとイメージがしやすいかもしれません。
トウモロコシ粉の方は少し粗挽きのコーングリッツと呼ばれるものが僕のお薦めですが、なければ細かいコーンフラワーでも構いません。キャッサバ粉とタピオカ粉も同様ですが、この辺りの選択の違いは、いわば更科蕎麦と田舎蕎麦の違いみたいなもので、より独特の風味を求めると粗挽きや全粒粉を選ぶということです。
粉以外の材料はバター、チーズ、牛乳、卵、ベーキングパウダー、塩、そして香辛料のアニスです。チーズについてはパラグアイでは「ケソパラグアージャ(パラグアイ風チーズの意)」というローカルなチーズを使います。このチーズは癖が強く、それが独特の風味を作り出します。これだけは日本では手に入らないので、代わりに僕はハードタイプのモッツアレラチーズを使っています。アニスは主にお菓子類に使われ、普段の料理ではあまり使わない香辛料ですが、この甘い独特の香りがチパには「マスト」な材料になります。
分量の目安:キャッサバ粉(500g)、トウモロコシ粉(250g)、ベーキングパウダー(20g)、チーズ(500g)、バター(150g)、卵(3個)、塩(小匙1)
先ずは材料をしっかりと捏ねます
始めにベーキングパウダーも含めて全ての粉を混ぜ合わせ、そこにアニスを入れます。アニスは一部を掌ですり潰すようにして加えると香りが一層立ちます。
次に卵、チーズ、バターを加えます。チーズとバターは少し刻んでおいた方が捏ねやすくなります。ここから少しずつ牛乳を加えながら捏ねていきますが、最初は生地が固くて結構ハードかもしれません。
捏ね上がったら棒状に伸はして成型、基本はドーナッツ形
生地が程良く捏ね上がったら適当な大きさに切り分け、手で棒状に伸ばします。
成型は2通り。単純なのは棒のまま10㎝程度に斜め切りして、表面にパンを焼く時と同様のクープ(切り込み)を入れます。もう一つは切った生地をドーナッツ型に結ぶんでクープを入れるもので、こちらがパラグアイの典型的なチパの形になります。
最後は200℃の石窯で20分焼きます
成形が済んだら、そのまま焼きます。上述のように本場のチパはレンガや粘土で作るオルノデバロという大型のカマドで作ります(中には人が入れるくらい大型のものまで)。今回は大谷石を使ったマイ石窯の「ジョコフォルノ」で焼きます。
約200℃の石窯温度で20分ほど焼いて完成しました。
早速味見します。二つに割るとチーズとアニスの香りが広がります。本場を彷彿させる出来栄えです。石窯の力もあって外はカリッと仕上がりました。欲を言えば、もう少し生地にふくらみがあり、中がモチッと仕上がれば完璧かもしれません。ポンデケージョとも少し違っ日本にない南米独特の味と食感です。チパは材料もシンプルで、また普通に家のオーブンでも焼けるので、ぜひ一度試してみてください。
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