トウモロコシ粉を挽いてイタリアの定番料理「ポレンタ」を作る

イタリア料理「ポレンタ」を知ってますか?

小麦で作るパスタやお米を使ったリゾットは最もポピュラーなイタリア料理の主食(プリモ・ピアット)で、日本のイタリアンレストランのメニューにも必ず載っています。ではポレンタはどうでしょうか。こちらも主食炭水化物系定番イタリア料理の一つですが、パスタやリゾットに比べるとレストランでも比較的マイナーで、特に家庭で作って食べている人はあまりいないのではないでしょうか。

ポレンタについてウイキペディアでは次のように書いてあります。「コーンミールを粥状に煮たイタリア料理である。粗挽きのトウモロコシの粉を、沸騰した湯やだし汁に振り入れて煮ていき、鍋の底に焦げ付かないように捏(こ)ねながら煮上げる。」

トウモロコシ粉を煮て作るポレンタ。

ポレンタはまさにウィキペディアに書いてある通りのシンプルなトウモロコシ料理なのですが、日本ではスイートコーン以外は料理にトウモロコシを使うことがほとんどなく、またトウモロコシ粉を使った料理も一般的ではないので、ポレンタはポピュラーになり難いのかもしれません。

トウモロコシ粉を挽いて作る本格ポレンタ

レストランで初めてポレンタを食べた人は最初は何だろうかと戸惑い、次に材料はトウモロコシと聞いてちょっと驚き、おそらく最後はその味を結構気に入って終わるのではないかと思います。ポレンタは炭水化物の料理ですが、どちらかというと主食というよりは料理の付け合わせとして出されることが多く、特に肉や魚の煮込み料理と相性が良いようです。普段食べ慣れていない分、トウモロコシの味わいが新鮮に感じられるはずです。

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ポレンタを自宅で作るには先ずトウモロコシ粉(コーンミール)が必要です。最近は時間をかけずに直ぐ作れるインスタントポレンタも市販されていますが、本来の味を楽しむにはポレンタ用として粗挽きされたトウモロコシ粉を手に入れ、これを伝統的な調理法に従い、時間をかけて練り上げていくのがやはり一番です。時間はかかりますが、特に難しいテクニックは必要ありません。

今回は市販のトウモロコシ粉ではなく、畑で収穫したトウモロコシを自分で挽いて自家製ポレンタ用トウモロコシ粉を作り、新鮮で香り高いポレンタ作りに挑戦しました。以前のブログ記事で自家製トウモロコシ粉を使ったトルティージャ作りについては何度か紹介していますが(飼料用トウモロコシから作る国産トルティーヤに悪戦苦闘トウモロコシを挽いて国産タコスに再チャレンジモチキビトウモロコシを使った本格トルティーヤとタコス)ポレンタは僕も初めてです。

ポレンタに向く硬質デンプンに富んだオレンジ色のトウモロコシ

ポレンタに使うトウモロコシはトルティージャ同様に日本では家畜の飼料用に栽培されているデントコーンと呼ばれる種類のものが適しています。今回使ったトウモロコシは下の写真の左側、実が黄色というよりはオレンジ色に近い種類のものです。これはフリントコーンという固いガラス状の硬質デンプンに富んだ(これがオレンジ色の正体)種類のトウモロコシです。本場イタリアでは様々な種類のトウモロコシを使ったローカルなポレンタがあるようですが、この固いオレンジ色のトウモロコシを使ったものが最もポピュラーなポレンタだと言われています。

黄色というよりオレンジ色の実は硬質デンプンに富みポレンタに向く

さて、トウモロコシは収穫してから暫くの間は外に干して乾燥させていました。程よく乾燥すると手でも簡単に脱粒出来ます。

実は穂軸に付いたまま適度に乾燥し、その後で脱粒し保存する

挽き立てのトウモロコシの香りが何ともいい!

脱粒したトウモロコシを粉に挽くにはグレインミルという粉砕機(製粉機)が必要です。トウモロコシは他の穀物に比べると実が大きくて固いので、粉砕機はかなりしっかりとしたものが必要です。僕は電動の家庭用グレインミルを使っています(やや手間はかかるけどコーヒーミルも使えると思います)。

家庭用の電動グレインミル。固いトウモロコシの実を粉々に。

粉は時間をかけるほど細かく出来ますが、ポレンタ用には黄色い粒が残る、やや粗挽きの粉の方が風味があって僕は好みです。スイッチを入れて粉を挽いた瞬間に新鮮なトウモロコシ粉の香りが一気に広がります。

粉はやや粗めに挽くのがお薦めです。

鍋で辛抱強くかき混ぜること小1時間

粉を挽いたら次はいよいよポレンタを作りです。ポレンタには多くのバリエーションがありますが、基本はお湯に塩とトウモロコシ粉を入れて生地が糊状になるまでかき混ぜるだけです。この時に好みでバターやチーズを一緒に混ぜたりもします。分量はトウモロコシ粉100gに対してお湯200cくらいが基本ですが、柔らかいお粥状にしたければ水の量を増やします。

粉は少しづつ入れます。鍋はテフロン加工がベター。

同じ粉モノでも小麦粉は直ぐに水に馴染んで生地を作れますが、トウモロコシは水に馴染みにくく、このため1時間くらいは生地が焦げ付かないように辛抱強く鍋の中をかき混ぜ続ける必要があります。これがポレンタ作りの最大のハードルです。イタリアでは自動でかき混ぜる仕掛けが付いた専用の鍋も売っているというので、やはり本場でもこれは面倒な作業なんでしょうね。

30分くらいかき混ぜているとかなり生地が固まってきて、お粥状になってきます。料理にもよりますが、マッシュドポテト位の固さに仕上げるにはもう少し時間を要します。

30分を過ぎてお粥状に固まってきたところ。

100g程度の粉だとおよそ40-50分でマッシュドポテト状の固さに仕上がってきます。今回は付け合わせなので、この辺で終了とします。

約50分で生地はマッシュドポテト状に。

ポレンタには肉の煮込みが合います

完成したポレンタを皿に盛ります。

ポレンタ料理には結構豊富なバリエーションがあるのですが、間違いがない定番は「牛肉のワイン煮」のような肉の煮込み料理の付け合わせです。肉の旨味を含んだソースと絡めるとポレンタの美味しさがとても引き立ちます。今回は牛もも肉のビール煮を作り、その付け合わせとしました。

ポレンタは見た目はマッシュドポテトのようですが、味の方はジャガイモよりコーンの方が自己主張があるように感じます。それだけに好き嫌いもあるかもしれませんが、一旦好きになると間違いなく癖になります。今回は挽き立ての粉を使ったこともあって、一段と味の個性が際立ったような気がします。他にもいろいろなポレンタ料理を試してみたくなりました。

牛もも肉のビール煮に付け合わせたポレンタ。他にない個性的な味。