新兵器「手動グレインミル」で自家製トルティーヤが画期的進化!

長年試行錯誤してきた自家製生地のトルティーヤ作り

メキシコ料理で主食の位置にあるトルティーヤはトウモロコシ粉を練って作る無発酵パンです。このトルティーヤで肉や野菜を包んだものが御存知のタコスになります。トウモロコシは小麦と違ってグルテンを含まないので生地がまとまり難く、そのままではパン作りに向かない素材です。このためメキシコ先住民はトウモロコシの実を消石灰でアルカリ処理する「ニシュタマリゼーション」という方法を編み出し、トルティーヤ用の「マサ」という独特の生地を作っていました。本来の「マサ」は手がかかりますが、最近は予めアルカリ処理して乾燥したマサ粉が市販されており、これを用いると本格的なトルティーヤを手軽に作ることができます。

さて、僕の長年の課題の一つが、本場メキシコと同じようにトウモロコシの実を挽いて本格的なトルティーヤを作ることでした。若い頃メキシコに6週間ほどホームステイした事があり、その時に食べた本格的なトルティーヤの味が心に残っていたのです。

トルティーヤに使うトウモロコシ粉(マサ粉)を作るにはスイートコーンは適さず、日本では家畜の餌用に栽培されているデントコーンと呼ばれる種類が適しています。このデントコーンの実は市販されていないので手に入れるのが少々難いのですが、僕の場合は仕事の関係で容易に手に入れることが可能で、これまでも度々トルティーヤ作りに挑戦してきました。

最初の課題はニシュタマリゼーション(アルカリ処理)

トウモロコシは電動ミルがあれば比較的簡単に粉にすることが出来ます。この粉をそのまま使って作る南米料理もあり、このブログでも以前紹介したことがあります(道産トウモロコシ粉で南米パラグアイの郷土料理「ソパパラグアージャ」を作りました)。

この粉に水を加えて練ると粘りがなく全くまとまりません。ここで登場するのがニシュタマリゼーションと呼ばれる独特のアルカリ処理です。具体的にはトウモロコシの実に対して3-5%の消石灰を加えてひと煮たちさせ一晩置きます。これで実が柔らかくなって粘りも生じ、さらに風味も増すと言われています。まさに古代メキシコ人の知恵です。

これを試した結果を記事にしたのが「飼料用トウモロコシから作る国産トルティーヤに悪戦苦闘」です。この時は農業で使う肥料の消石灰をホームセンターで買って使いましたが、ニシュタマリゼーションの方は上手くいったものの、すり潰しが上手くいかず、大きな粒が残って生地がほとんど固まりませんでした。トウモロコシの実には硬い部分(硬質デンプン)と柔らかい部分(軟質デンプン)があり、硬い部分を上手く挽くことが出来なかったのです。トルティーヤの仕上がりはボソボソした感じで、とてもトルティーヤと呼べる代物ではありませんでした。

フードプロセッサーでは生地がボソボソで、トルティーヤもご覧の代物。

その後のチャレンジ(トウモロコシを挽いて国産タコスに再チャレンジ)ではニシュタマリゼーションに天然由来の消石灰「ホタテカルシウム」を使いました。このホタテカルシウムは食品添加物なので、農業用の消石灰よりはこちらを使う方がお薦めです。前回同様の処理でニシュタマリゼーションの方は問題なくクリアしましたが、やはり実を挽く段階で上手くいかず、最終的にはインスタントのマサ粉をつなぎにするという折衷案で妥協しました。

課題は「擂る」と「潰す」が同時にできること

こうした経験から得た結論は、「擂る」と「潰す」を同時に処理する道具が必要だということでした。考えてみればトルティーヤ作りに使われるメタテというメキシコ伝統の石の道具は、まさにこの「擂り潰す」のに最適な形状です。しかし、メタテは近くになく、またあったとしても結構手間がかかることは間違いありません。何か別な方法がないかと海外のネット記事や動画を調べていて見つかったのが今回の新兵器である手動のグレインミルです。

コロンビア製、手動のグレインミル(穀物粉砕機)。

グレインミルは写真のように挽肉を作るミートチョッパーによく似た形状です。真ん中のカップにトウモロコシの実を入れると下の写真のように左側から擂り潰された生地が出てきます。

下の写真が実を擂り潰す部分の形状です。左右のギザギザ面が合わさって実が細かくすり潰されます。写真で手前を向いている面が向き合って、そのギザギザに挟まれた実が細かく擂り潰されます。

左右の面が向き合い。そのギザギザによって実が細かく擂り潰される。

生地は難なくまとまり、つなぎ無しでトルティーヤが出来ました

さて擂り潰したトウモロコシの生地を練ってみると、つなぎ無しでも難なくまとまりました。粘りもあります。

つなぎ無しでも難なくまとまりました。

これを10等分に小分けしてトルティーヤプレスで伸ばします。前回までは、この生地を伸ばす際に生地がバラバラに崩れてしまったのですが、今回はこれも難なくクリアしました。

トルティーヤプレスで生地を伸ばします。

温めたクレープパンを使って伸ばした生地を焼きました。片面3-4分が目安です。インスタントマサで作る生地と比べると雑多な部分が目立ち、さながら田舎蕎麦の趣です。

クレープパンを使って焼き上げます。片側3-4分が目安。

さて少し硬めですが、これまでのようにバラバラに崩れることは最後までなく、想定通りの感じに仕上がりました。前回のようにマサ粉を加えればもっと滑らかになるかもしれません。

それにしても新兵器のグレインミルの働きは抜群です。課題であった「擂る」と「潰す」を完璧にこなしてくれて、これまでとは全く違った生地を作ることが出来ました。自家製トルティーヤ作りにトライするなら、これは必需品だと思います。今年は黄色の他に紫色の「もちきび」も収穫しています。次はこれを使ったトルティーヤにトライしてみようと思います。