北海道別海町の人気グルメ「ロマン」のポークチャップ
年に何度か訪れる道東(北海道東部)の別海町。広大な草地が広がる酪農の町として有名ですが、この町の名物グルメが「ロマン」というお店の極厚特大「ポークチャップ」です。
店のメニューには700gと400g(ハーフ)の2種類のポークチャップがありますが、見た目も大迫力なのは700gの通常サイスで、味もよりジューシーで美味しく感じます。焼き上がりにはハーフで25分、通常サイズでは50分もかかるので、大抵のお客さんはあらかじめお店に予約をしてから訪れているようです。ケチャップ味の効いた甘いソースは分厚い豚肉との相性、そしてバランスが抜群で、最初はその量に驚いても大方の人は意外とあっさり食べ終えてしまいます。
こんな名店の味を簡単に再現できるわけはありませんが、BBQマニアとしては何とかトライしてみたくなる一品です。そんなわけで今回は別海町「ロマン」の「ポークチャップ」にオマージュしたBBQにトライしてみます。
低温調理で極厚肉を柔らかくジューシーに!
さて、塊肉や極厚肉をグリルやオーブンで調理する際に難しいのが肉の水分の保持です。以前トライしたBBQのエベレストたるブリスケットの長時間スモークで、僕にもこの重要性がよく分かりました。ブリスケットはオフセットグリルのようなスモークが出来る専用グリルを用いて、130℃位の比較的低温で長時間燻煙調理を行い、そこから独特の肉質の仕上がりとフレーバーを作り出します。しかし、こうした長時間加熱処理を行う調理には一方で肉の水分が過度に失われてしまう危険もあります。適度な水分を維持するためにはスモーカーの中で水分を蒸発させたり、途中で肉をアルミフォイールで包んで乾燥を防ぐ等の工夫が施されます。名店ロマンのポークチャップも、上述のように僕は400gより700gの大きいサイズの方が美味しく感じるのですが、これも肉の水分の違いなのかもしれません。つまり大きい肉の方が内部により水分を保持し、肉のパサつき感が少なくなってジューシーに感じるのではないかということです。
ところで肉を柔らかくジューシーに仕上げる方法として、最近ポピュラーになった低温調理があります。実は僕も主にローストビーフ作りのために低温調理器を利用していますが、その能力には正直驚かされました(低温調理器BONIQで作る究極?!のローストビーフ)。最近ではステーキの下処理にも低温調理器を使っていますが、威力は抜群です。これをポークチャップに使わない手はありません。
「BONIQ2.0」で2時間半、65℃の低温調理で肉を下処理
低温調理では肉の種類と厚さによって安全な調理時間が決まっています。例えば厚さ40㎜の豚肉を65℃で調理するには2時間50分が基準値となります。65℃は豚肉の低温調理では安全と味の両面からベストとされている値ですが、今回の低温調理では肉の厚さ、低温調理後に重ねてオーブン調理を行うこと等を考慮して調理時間を2時間半としました。
低温調理ではビニール袋に材料を入れて調理します。しっかり空気を抜いて密封すればジップロックでも問題はありませんが、僕は真空パック器(フードシーラー)を使っています。この方がパックから空気が完全に抜けて材料が扱いやすく、調理中に万が一にも水が侵入する心配がありません。
ややスパイシーな大人のポークチャップソースを作る
ポークチャップでは肉と同じくらいにソースがとても重要です。ただケチャップを多めに入れたソースと思われがちですが、そこにあれこれ工夫することで独特の味が出来上がります。「ロマン」のポークチャップもケチャップ味が前面に出ていますが、それはただのケチャップ味ではなく、そこにメニューの歴史と創意工夫を感じます。
今回僕が作ったソースは、米国の「ポークチョップ」レシピからアイデアを頂戴したものです。ポークチョップとポークチャップは名前が似ていて混同されがちですが、ポークチョップは米国の料理で、簡単に言えば豚肉をやや厚めに切って焼いた料理全般を指すようです(チョップは「切る」の意味)。ポークチョップは豚の骨付き肉をのことだとよく書かれていますが、これは本場のレシピを見ても必ずしもそうではないようです。何れにしてもポークチャップは米国でポピュラーなポークチョップに由来した純然たる日本生まれの料理で、実際ポークチャップという料理は米国にないそうです(因みにポークチャップのチャップはケチャップのこと)。ただポークチョップにもケチャップベースのソースがよく使われており、ここからポークチャップが派生して誕生したようです。ただポークチョップはケチャップ味限定というわけではなく、ソースの味にはバラエティがあります。またケチャップの使い方もポークチャップほどストレートではなくスパイスも多めに使います。
今回僕が作ったソースの基本はケチャップとウスターソース、そこにリンゴ酢とシードルを入れました。リンゴのジュースやシードル、またリンゴ酢は豚肉との相性が良く、ケチャップとウスターソースとともにアメリカのBBQソースではよく使われる定番の調味料です。また市販のBBQソース(ヨシダソース)も少し加えましたが、これは独特のスモークテイストをつけるために加えたもので分量的にはスプーン大さじ1程度の僅かな量ですが、よりアメリカンテイストになります。スパイス類は黒コショウ、カイエヌペッパー、シナモンとクローブ、セロリーソルト少々です。スパイス類を多めに入れるとより大人風味のソースになります。
ソース材料の分量はお好みですが、一般的なポークチャップ風に近付けたければトマトケチャップと砂糖、蜂蜜の分量を多くするとよいと思います。因みに今回僕が作ったソースには、参考にしたポークチョップレシピの3倍量のトマトケチャップと2倍量の砂糖と蜂蜜を使いました。
肉の表面に焼き目を入れてから全体にソースを絡める
事前に2時間半の低温調理を終えた豚は基本的には調理済みの状態です。ここから先は主にソースと肉を絡めた味付けの過程となります。ソースと絡める前に先ず肉の表面に強火で焼き目を付けます。焼き目を付けることで香ばしさが増して風味が良くなると思います。
次は適当な大きさのスキレットに入れた肉全体に上からソースを乗せて絡めます。これで後はオーブンに入れて仕上げるだけです。
仕上げはオーブン仕様のKAMADOJOEで30分
仕上げには過去の記事でも度々紹介してきた万能カマド型グリル「KAMADOJOE」を使いました。KAMADOJOEはセラミック製の蓋付本体により内部の保温性が抜群で、オーブン機能がとても優れています。オーブンとして使う場合は火と鍋の間にヒートディフレクターと呼ばれる円盤状の板を挟み、直火が直接鍋や材料に当たらないような工夫もされています。
KAMADOJOEの温度は予め約200℃に調整しました。基本的に肉には既に火が通っているので、オーブン調理時間は30分を目安とします。
低温調理の威力は如何に?EL DORADO流ポークチャップ完成!!
KAMADOJOEで35分間オーブン調理、ソースがグツグツと煮え立ち、見た目がとても良くなってきました。そろそろ完成です。
KAMADOJOEから肉を取り出して皿に乗せ、ナイフで切ってみました。ナイフがスッと入り肉が切れます。とても柔らかい仕上がりで、低温調理の力が十二分に発揮されているようです。グリルやスモーカーだけの長時間調理ではこの柔らかさはとても難しい、というか無理だと思います。
さて、味の方はどうでしょうか。ソースはスパイスが効いて本家「ロマン」よりちょっと大人の味⁈ いやとても美味しいです!! より濃厚な味が好みならもう少しオーブンを高温(220℃くらい)にしてソースを煮詰めても良いかもしれません。
低温調理器「BONIQ2.0」とカマド型グリル「KAMADOJOE」の初タッグ、とりあえず大成功でした。
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