トウモロコシとメキシコ唐辛子を使って中南米風料理を作る

メキシコ原産「穀物の王様」トウモロコシ

トウモロコシは生産量が世界一であることから「King of Crops」と称さる作物です。しかし、トウモロコシ以外の世界三大穀物である米や小麦と比べると、食料として直接人間の口に入る割合が低く、大半が家畜の飼料、あるいは工業用として利用されています。

メキシコの古代壁画に描かれたトウモロコシ

トウモロコシはメキシコ原産の作物で、古代メキシコの主食として重要な位置を占めてきました。新大陸には小麦や米はなく、トウモロコシが主要なカロリー源だったのです(これと並ぶのがインカのジャガイモ)。ではトウモロコシの味はどうかと言えば、正直なところ小麦や米に比べると劣り、使い勝手も悪いと思います。

トウモロコシ粉は小麦と異なりグルテンを含まないので生地を捏ねてもまとまり難く、小麦パンのようにふっくらと焼くことが難しい材料です。メキシコといえばトウモロコシ粉を使った無発酵パンの一種トルティーヤが有名ですが、トルティーヤに使うマサと呼ぶ生地はトウモロコシの実を一晩アルカリ処理して粘りと柔らかさを加えたものです(詳しくは過去記事、新兵器「手動グレインミル」で自家製トルティーヤが画期的進化!参照ください)。これは古代メキシコ人の偉大な知恵の産物なのですが、小麦パンと比べると味、そして汎用性が劣ると言わざるを得ません。現在でもトウモロコシの用途は家畜の餌や工業用での用途がほとんどです。

家畜飼料用のトウモロコシ、実は硬くて処理が難しい

このように食用としては欠点が多いトウモロコシですが、中南米やアフリカでは主食、あるいはイタリアのポレンタのような郷土料理として食にも供されています。実際最初は馴染めなくとも、食べ慣れてくるとトウモロコシ独特の風味がむしろ好ましく感じられるようになってきます。

食用のトウモロコシ粉は普段スーパーでは見かけませんが、食材の専門店に行くと主に製菓用として普通に売られています。挽き方の細かい順にコーンフラワー、コーンミール、コーングリッツの3種があります。またこれとは別にポレンタ用のトウモロコシ粉というものも売られています。ポレンタ用も基本的には他のトウモロコシ粉と同様に加工されたものですが、挽き方がコーンミールとコーングリッツの中間位で、本場イタリア産であればポレンタに適した硬質のフリントコーン品種を使って作られています。

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メキシコ料理の味の決め手メキシコ唐辛子

唐辛子と言えば韓国やインドを本場と連想しがちですが、これも原産地はメキシコ等の中南米です。スペイン語では唐辛子、ピーマン、パプリカは全てpimientoと呼んでいますが、植物学的にもこれらは全て同じ種類になるそうです(ちなみにスペイン語でコショウは末尾がaで終わる女性形のpimientaという)。

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メキシコ料理でサルサとはソースの事を指します。数多くのサルサが存在しますが、何れも唐辛子が欠かせない材料になっています。新鮮な緑の唐辛子を使ったり、乾燥した唐辛子を使ったり、唐辛子自体の種類が多種多様なのでサルサのバリエーションも驚くほど多彩です。こうしたメキシコ本場の唐辛子は手に入り難いこともあり、僕も普段はあまり使うことはないのですが、一昨年に東京で開かれた古代メキシコ展の会場で試しに購入した本場の乾燥唐辛子を食品庫に放置していたので、今回思い立って初めて調理してみることにしました。

上がアンチョ、下がワヒージョ

上の写真が今回使った乾燥唐辛子、アンチョとワヒージョです。この2種は何れもメキシコでとてもポピュラーな唐辛子で、アンチョはマイルドな辛みと甘み、ワヒージョはマイルドな辛さでコクがあるということです。

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自家挽きトウモロコシ粉で先ずはポレンタ

自家挽きしたトウモロコシ粉で作るポレンタは以前のブログ記事トウモロコシ粉を挽いてイタリアの定番料理「ポレンタ」を作るで詳しく紹介しました。上述のようにトウモロコシ粉は市販のものも手に入りますが、もしトウモロコシの実が手に入るならば、自分で粉を挽くことで違った風味を楽しむことが出来ます。市販品と自家挽きの大きな違いは実(種子)に胚の部分を含むか含まないかです。トウモロコシの実は種子なので、胚と呼ばれる次代の葉や茎や根へと成長する部分と、この成長のために必要な養分となるデンプンを蓄えている胚乳の2つの部分から構成されます。このうち胚には様々な成分が含まれていて、これが所謂雑味の素になります。このためデンプンを取り出すことが目的の通常の加工では最初にデジャミネーションという処理を行い、予め子実中の胚の部分を取り除いてしまうのです。この処理によってデンプンの純度が上がり、雑味も取り除かれます。

家庭用のグレインミル(穀物粉砕機)

自分でトウモロコシを挽く場合は胚は除かないので、「雑味」の部分も混じることになります。実は、これが市販の粉にない風味となり、手作りの味を生むわけです。

挽き立てのトウモロコシ粉と水をかき混ぜながら加熱する

ポレンタの作り方は簡単です。温めながらただひたすらかき混ぜる。初めはトウモロコシ粉1カップに対して水3-4カップくらい。15分くらい経つと糊状に少し固まってきて、30分くらいでやや硬めの糊状に達します。あまり早く水分が減り、かき混ぜ難くなったら水を足して調整します。

30分過ぎたあたりでパルメジャーノチーズを入れて味付け

30分過ぎたあたりでパルメジャーノチーズを入れ、さらに混ぜ続けます。分量にもよりますが大体40-45分くらいで完成します。終了5分くらい前にバターと塩を加え味を調えます。

最後にバターと塩を入れて味を調えて完成!

メキシコ唐辛子を使ってサルサを作る

初めに2種類のメキシコ唐辛子、アンチョとワヒージョの種を抜き、フライパンで両面を少し焦げる程度に焼きます。

種を抜いた唐辛子の両面を焼く

タマネギとトマトをフードプロセッサーで粉砕し混ぜ合わせます。続けてメキシコ唐辛子を入れて同様に粉砕して混ぜ合わせペースト状にします。粉砕するとメキシコ唐辛子の独特の香りが一気に立ち上がります。

タマネギ、トマト、唐辛子を粉砕
全ての材料をよく混ぜ合わせる、メキシコが薫ります

今回は一緒に豚肉を煮込んだソースにしました。4-5㎝角に刻んだ豚肉とタマネギを鍋に入れて沸騰させ、次いで混ぜ合わせた唐辛子ペーストを加えたら弱火で1時間程度煮込みます。煮込み始めると家中に強いメキシコの独特の薫りが広がりました。メキシコ唐辛子の凄い力です。煮込みの最後に塩コショウで味を調えたらメキシカン(メキシコ風)サルサは完成です。

豚肉とタマネギを入れて沸騰させます
煮立ったら唐辛子ペーストを入れて弱火で煮込む

トウモロコシ粉料理の入門に最適なソパパラグアージャ

さて以前に動画で紹介した南米パラグアイの郷土料理「ソパパラグアージャ」。この料理は比較的簡単で、トウモロコシ粉を使った料理の入門に最適な一品だと思います。材料はトウモロコシ粉(市販の場合はコーングリッツかポレンタ用がお薦め)300g、チーズ(ハードタイプのモッツアレラがお薦め)300g、卵4個、タマネギ中2-3個、牛乳400cc、ラード100gです。タマネギは刻んで透き通るくらいになるまで炒め、これに全ての材料を加えて混ぜ合わせ塩を加えて味を調え、180-200℃のオーブンで40分くらい調理して完成です。焼けたトウモロコシの良い香りが広がります。

材料を全て混ぜ合わせます
上に追いチーズしてもいいです
焼き上がり

日本にない味を楽しめるトウモロコシ料理

日本で食べるトウモロコシというと大抵はスイートコーンを指します。コーン風味のスナック菓子もありますが、トウモロコシ粉を使った本格的なトウモロコシ料理は、お菓子以外では食べる機会がほとんどありません。それだけにトウモロコシ料理は日本にない幻の味の一つでしょう。同様に日本で手に入らないメキシコ唐辛子も日本にない幻の味になると思います。早速幻を試食してみます。

メキシコ風サルサをかけたポレンタ

ポレンタは自分でたまに作りますが、いつもはイタリア風で、今回メキシコ風サルサで食べると完全なメキシコ料理になりました。トウモロコシも唐辛子もともにメキシコ生まれなので相性が抜群なようです。メキシコ唐辛子の風味、そして香りは思っていた以上にとても強いです。

「メキシカンサルサのポレンタ」と「ソパパラグアージャ」

僕の定番南米料理の一つソパパラグアージャ。焼いたトウモロコシの芳ばしい香りと焦げたチーズの味がとても良くマッチングしています。特に焼きたてはビールに合います。ソパパラグアージャによく似たパラグアイ料理に生のトウモロコシの実を使う「チパグアス」があります。こちらも僕の大好きな味です。

今回はメキシコ唐辛子があったので比較的簡単に作れ、メキシコ唐辛子とトウモロコシ粉の魅力が味わえそうな料理を作ってみました。どちらも中南米を代表する素材ですが、ネット等でも材料は手に入るので是非一度作って味わってみてください。

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