春来りてBBQシーズン開幕
全国的に暖かい春のようです。いよいよ僕のBBQシーズンも開幕ということで、先週末に今年初めての本格BBQにトライしました。残念ながらこの日に限って肌寒い雨の一日となり、庭にタープを張ってのBBQとなってしまいましたが。
アメリカンBBQを代表するブリスケットとは?
さて、僕が今回作ったBBQはブリスケットと呼ばれるものです。しかしブリスケットと聞いても多くの人はピンとこないと思います。実は僕もブリスケットが何かを知ったのは米国のBBQレシピ本にブリスケットという単語がよく出てきて、一体ブリスケットとは何ぞやと調べたのが最初でした。
ブリスケットというのは日本語の肉の部位で言う「肩バラ」に相当し、呼び名として「ブリスケ」という略語も存在しているようです。しかし普段焼き肉屋なんかでも「ブリスケ」というメニューを目にする機会はあまりないと思います。
一方アメリカンBBQの世界でブリスケットは特別な存在です。一般的なBBQレシピ本にはもちろん、一冊丸ごとブリスケットのレシピという本まであったりします。YouTubeやSNSにもBBQファンが休日に作ったBBQブリスケットの投稿が溢れています。
作って良し食べて良し、ブリスケットはBBQのエベレスト⁈
では何故ブリスケットはBBQファンの心を掴むのでしょうか?実はブリスケットはステーキや焼肉にしても固くて美味しくない肉の部位なのです。ところが同じブリスケットを低温で時間をかけ調理することで(スロークッキング)、摩訶不思議、コラーゲンがゼラチン化し、ジューシーで味わい深い美味しい肉に変身します。アメリカ人が大好きなスモーク風味をたっぷりと効かせた「テキサス式ブリスケット」がBBQとしては特に人気です。
テキサス式ブリスケットには、BBQのテクニックを駆使するゲームとしての高いハードル、アメリカ人のハートを打つスモーク風味の肉の旨味、そして長時間かけて完成にたどり着く満足感、これら全てを併せ持つ魅力があり、それゆえに「BBQのエベレスト」と称される独特のステータスを得ているのです。
BBQブリスケットには2室式のオフセットグリルが使いやすい
BBQブリスケットの王道ともいうべきテキサス式ブリスケット。シーズン早々いきなりエベレストに挑むわけですが、今回は2回目の挑戦です。前回は温度管理が今ひとつ上手くいかなかったものの、味は結構上出来で記憶にもしっかり残っています。ポイントは長時間かけてじっくりと調理すること、そして表面が煙で真っ黒くなるくらい強烈にスモークすることの二つです。調理するにはWeberのケトルグリルのような蓋つきのグリル、あるいはオフセットグリルというどちらかと言えば燻製機に近いタイプのグリルが適しています。今回僕が使ったのはChar Broilのオフセットグリルですが、これはコンパクトで温度管理がしやすく、普通の燻製機としても使い勝手がとても良いと思います。
オフセットグリルには大小二つの部屋があります。肉を調理するのは右側の大きなメインルームで、左側の小さなサイドルームは炭や木を燃やす場所になります。こうした直接材料を火に当てない調理法を「インダイレクト」方式と呼びます。BBQブリスケットは温度をあまり上げずに、じっくり調理するのがポイントですが、具体的には右側の調理室の温度を105℃-130℃くらいでキープしながら6-8時間程度スモークし続けます。この長時間の温度管理が上手く出来るかどうかが仕上がりを左右します。
燃料は炭を使います。長時間なので炭は当然何回も足さなければなりません。従って炭は火持ちの良いものの方が都合が良いのですが、火持ちの良い炭は火付きが遅いので、炭を足していく際に温度が下がらないよう注意が必要です。今回僕はホームセンターでよく売っているオガ備長炭をメインに使いました。チムニースターターで普通の炭に先ず火を起こし、これをグリルの底に並べたオガ備長炭の上に被せます。オガ備長炭に十分に火が付いたら、その下にまたオガ備長炭を足し、炭火の様子と温度を見ながらこれを繰り返します。新しい炭は火が付いている炭の上ではなく必ず下に置いてください。温度の上がりが悪ければ炭の数を増やし、上がり過ぎるようなら数を減らします。
火が安定した後の火加減はオフセットグリルの小さい方のルームに付いている通気口と大きいルームに付いている煙突の蓋の開閉で調整します。口と蓋を開くと空気が室内を循環して温度が上がり、閉じると温度は下がります。ちょっと面倒そうですが、炭火が安定していれば結構細かく温度を上下させることが出来ます。
1台あるととても便利なBBQ用デジタル温度計
温度管理には、あると便利で強力な武器が一つあります。それはワイヤレスのBBQ温度計です。この温度計は2つのセンサーを持ち、グリル内部と肉内部の温度を同時に計って受信機に送信します。受信機を持ち歩けば離れていても常時温度が確認できます。また温度が設定よりも上下するとアラームが鳴る機能もあります。温度が上限に近付いてきたら早めに空気の流れを止めて温度を下げたりできるので、火加減の調整が格段に容易となります。この温度計は特にブリスケットには必需品だと思います。最近ではワイヤレスタイプの温度計も販売されていて、スマホアプリと連動させるなど使い勝手が良いものが登場しています。
ブリスケットの仕込みは前日から始まる
さてブリスケットの調理です。今回の肉は輸入牛のネット販売を行っている、「異国精肉店ザ・アミーゴス」さんから3㎏の塊を買いました。最近はBBQブームのせいかネットでもブリスケットの塊が手に入りやすくなっています。準備は調理の前日から始め、先ず予め解凍して室温に戻した肉にマスタードとウスターソースを手で全体に塗って伸ばします。ソースは今回ウスターソースを使いましたが、レシピでは米国風のBBQソースをよく使っています。
次にスパイスや調味料をミックスして作るBBQ「ラブ」を肉全体に手ですり込みます。今回は砂糖、塩に加えてパプリカ、クミン、レッドペッパー、カイエヌペッパー、ブラックペッパー、ガーリックパウダーなどでラブを作りました。この状態で一度肉をラップにくるみ一晩置きます。
完成まで10時間のスモークスタート
スモークは朝8時にスタート。上述した要領で炭を準備し、温度が上がったところでグリルに肉をセットします。温度計のセンサーは1本は肉の深い所に刺し、もう1本は肉の上に乗せてグリル内の温度を測ります。写真にはありませんが燻煙には水に浸したスモークチップとスモークウッド(何れもヒッコリー)を使いました。
さて温度管理がしっかりできれば、あとは肉の内部温度を徐々に上げていくだけです。目標は先ず71℃。グリル内の温度を120℃前後に保ち、約3時間でようやく肉の内部温度が59℃になりました。
肉を長時間焼いていると表面が乾き過ぎたり、またグリル内の温度差から焼け方にムラが生じる場合があります。そこで1時間おきくらいに肉の方向を入れ替え、その際にモップソースと呼ばれるソースを表面に塗りました。今回のモップソースはリンゴ酢とビールがメインで、そこに塩、コショウ、砂糖、ガーリックパウダーを足したものです(BBQピットボーイズレシピから拝借)。モップソースを塗ることで水分補給だけでなく風味がとても良くなります。
肉の温度は70℃が最初の目安、次の目安は90℃
開始から7時間少々経って、ようやく内部温度が70℃を超えました。ここまで進むと写真のように肉の表面は煙で相当黒ずんできます。ここで肉をいったん取り出してアルミフォイルで包み再度グリルに戻します。アルミで包むのは乾燥防止が主目的です。スモークはここで終了しますが、調理は引き続き120℃前後で進めます。そして最終的に肉の温度が90℃くらいになるまで続けます。
完成したブリスケットです。肉をアルミフォイルに包んでからさらに2時間加熱し、肉の温度が90℃超えたところでグリルから降ろし、そのまま1時間休ませました。朝8時から始めて完成は夕方6時、10時間を要しました。流石はBBQのエベレスト。この日は温度管理がほぼ完璧でしたが、ただ肉はちょっと乾燥気味の仕上がりでした。課題はまだまだありますが、そこが次回への挑戦意欲を掻き立てるところでもあり、今日の出来は合格点です。
達成感もブリスケットの味の一部
完成したブリスケットを早速試食しました。まずはスライスしてマッシュポテトを付け合わせます。ブリスケットとマッシュポテトとの相性はとても良く、一緒に口にすると最高です。
次に細かく刻んでパンにはさみ少しマスタードを利かせました。これはプルドポークみたいな感じです。味はもちろんSuper!!
ブリスケットはスロークッキングが作り出す美味しさが魅力ですが、仕込みから1日以上かけて完成させる達成感がさらにこの味を引き立てます。
良いですね♪
作ってみたくなりました。
道具を揃えて私もチャレンジしてみようと思います。